東北大学大学院教育学研究科前田駿太研究室は2020年4月に発足した臨床心理学領域の研究室です。不安,抑うつ,ストレスをはじめとした心理的な困りごとがどのように起こり,持続するのか,実験や調査を通して明らかにすることをめざしています。
教員の主要な関心
急性ストレッサー経験後のストレス反応の回復に影響を及ぼす認知的情報処理過程
嫌な出来事(ストレッサー)を経験したときにネガティブな気分や生理的反応が生じるのは自然なことですが,出来事が終わった後も回復せずに反応が持続してしまうのは健康への悪影響につながりえます。
このようなストレス反応の回復は,私達の考え方によって妨害・促進されうるのかを検証するために,唾液中コルチゾールを主な指標とした一連の実験研究を行ってきました。
これまでの成果のみで十分明確になっているとはいえませんが,①ストレッサーについて考え続けるとコルチゾール反応は持続しやすく,自分をいたわるような考え方をすると回復しやすい,
②ただしその人の元々の不安症状の程度や普段使い慣れている対処方略によってその効果は左右される,と考えられます。
関連研究:Maeda et al.(2017); Maeda et al.(2022); Maeda(2022)
ストレスが認知・行動に及ぼす影響
ストレッサーの経験はネガティブな気分や生理的反応を生じさせるのみならず,中枢神経系への作用をも介して私達の知覚や行動,意思決定にも影響を及ぼします。
これは生物としての適応のために重要なしくみであるといえますが,現在の社会で生活するうえでは不適応的な行動パターンを引き起こす余地もあります。
ストレスが私達の認知・行動に及ぼす影響を明らかにすることで,ストレス下で生じやすい行動パターンを理解し,セルフコントロールに役立てられればと考えています。
これまでの研究では,ストレスと心拍知覚や間食行動の関係を調べてきました。
関連研究:Maeda et al.(2019)
ストレッサーの実態把握
「ストレスとうまく付き合う」というのは大事な考え方ですが,誰もがストレスを感じるような状況はなければないに越したことはありません。
潜在的にストレスフルな状況の実態把握を通して,社会においてストレッサーそのものを減らすための提言につなげるような研究もできればと考えています。
まだあまり多くは取り組めていませんが,これまで新型コロナウィルス感染症流行時のビデオ会議システム導入に伴う負担についての研究などに取り組んできました。
関連研究:前田・木村・佐藤(2022)
研究室の特徴
研究手法
前田駿太研究室は臨床心理学領域の研究室ですが,教員は主に実験法を用いた研究を行ってきました。特に,参加者の方にストレスを与える手続きを伴う研究を多く行ってきましたので,このような実験の手続きや必要な倫理的配慮について指導できます。また,ストレスの生理指標として唾液中コルチゾールや自律神経活動を測定する研究を行うことができます。調査研究にも多く取り組んでいますが,一時点の横断研究だけでなく,日誌法や経験サンプリング法などの手法を積極的に取り入れています。
臨床実践
教員は公認心理師・臨床心理士の資格を保有しており,心療内科クリニック等での臨床実践も行っています。教員は主に認知・行動療法を専門としており,研究室内では関連する書籍や事例研究の読書会を行うこともあります。
学生の主な研究テーマ
教員の主要な関心は上記のテーマですが,所属学生はこれに限らずさまざまなテーマに取り組んでいます。上記のテーマ以外ですと,メンタルヘルス専門家への援助要請や,健康関連行動(睡眠,食行動,スマートフォン使用など)の生起・阻害メカニズムに関心をもっている方が多いように思います。本研究室に所属を希望される方はContactのページもご覧ください。